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いい大人ならカプセルホテルとか、ネカフェでも一晩過ごせる。身分証明もできない子供だから、こんなところで野宿なんて発想になるのかもしれない。
「……はぁ」
どうしよう。見て見ぬふりしてもいんだけど、未成年だと思うと、ちょっと可哀想な気もする。
男は、どこまでも新聞紙を追っかけていた。間抜けな姿。まるで新聞紙にからかわれているようだ。北風に乗って舞う新聞は、男を翻弄しフワリと舞い上がると、フェンスを超えてハラリと落ちた。
げ。
また吹き付ける風。
新聞紙あろうことかは、バサバサと音を立てて俺の足に絡まり止まった。
男が公園から出てくる。そして躊躇することなく俺に近寄って来た。俺はしかたなく足に絡まる新聞紙を捕まえて、そいつを見た。
分厚いジャンパーのフードをかぶった……少年のような雰囲気の男。
毛の長い茶色のファーの中に色白のキョトン顔。物怖じする気配のない真っすぐな瞳。小さな唇が薄く開いて言った。
「ソレ、俺の」
「あ、う、うん」
年齢は分からない。若いけど、未成年ではないのか……? もう少し上なのかもしれない。でも、やはり声は幼い。
そう思いつつ、掴んだ新聞紙を渡す。
男は新聞紙を見て、キョロッと視線を上げた。次に口角をムニッと上げて、愛想のいい表情になった。
「ありがと」
そう礼を言うと、新聞紙を受け取り、クルリと背を向け公園へ戻ろうとする。
「あ、あの」
思わず声が出た。自分にギョッとする。
男はピタッと立ち止まり、顔だけで振り返ってこちらを見た。
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