4/12
前へ
/125ページ
次へ
 いい大人ならカプセルホテルとか、ネカフェでも一晩過ごせる。身分証明もできない子供だから、こんなところで野宿なんて発想になるのかもしれない。 「……はぁ」  どうしよう。見て見ぬふりしてもいんだけど、未成年だと思うと、ちょっと可哀想な気もする。  男は、どこまでも新聞紙を追っかけていた。間抜けな姿。まるで新聞紙にからかわれているようだ。北風に乗って舞う新聞は、男を翻弄しフワリと舞い上がると、フェンスを超えてハラリと落ちた。  げ。  また吹き付ける風。  新聞紙あろうことかは、バサバサと音を立てて俺の足に絡まり止まった。  男が公園から出てくる。そして躊躇することなく俺に近寄って来た。俺はしかたなく足に絡まる新聞紙を捕まえて、そいつを見た。  分厚いジャンパーのフードをかぶった……少年のような雰囲気の男。  毛の長い茶色のファーの中に色白のキョトン顔。物怖じする気配のない真っすぐな瞳。小さな唇が薄く開いて言った。 「ソレ、俺の」 「あ、う、うん」  年齢は分からない。若いけど、未成年ではないのか……? もう少し上なのかもしれない。でも、やはり声は幼い。  そう思いつつ、掴んだ新聞紙を渡す。  男は新聞紙を見て、キョロッと視線を上げた。次に口角をムニッと上げて、愛想のいい表情になった。 「ありがと」  そう礼を言うと、新聞紙を受け取り、クルリと背を向け公園へ戻ろうとする。 「あ、あの」  思わず声が出た。自分にギョッとする。  男はピタッと立ち止まり、顔だけで振り返ってこちらを見た。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1272人が本棚に入れています
本棚に追加