1269人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「ちゃんとユウと付き合いたい。付き合ってくれる? どこにも行かないと約束してくれる?」
ユウは頬を挟まれ、口をタコみたいに突き出し、俺をじっと見つめたまま大きく頷いた。頷いた途端、頬がもっと盛り上がって更にタコみたいに口が突き出る。
なんて可愛いんだろう。
俺は「ぷぷっ」と吹き出しながら、もっと両手でユウの頬を挟んだ。
「俺さ、恋愛に関しては超慎重派で……こんなふうに誰かを求めたことなかった」
ユウはタコなお口のまま、黙って俺の話を聞いている。
「きっと、ユウだからなんだと思う。ユウはそう思うと、モテモテなんだろうな。こんな俺みたいな鈍亀まで夢中にさせちゃうんだから。でも、よそ見すんなよ?」
ムニュとした口のまま、コクコクと何度も頷く。その口にチュッとキスして、可愛らしい変顔にまた微笑んだ。
「へおくんもえ」
やっと発したユウの言葉に、二人で笑い合ってると携帯が鳴った。メールの着信音だ。俺はユウの頬を両手で擦り、もう一度キスして手を離し、楠木からのメールを確認した。
「あ、今電車に乗ったってさ」
「うん」
半裸のユウを引き寄せギュッと強く抱きしめた。
新年会なんてキャンセルしたい。まったく、なんてタイミングだろう。
「服着ようか? 一緒に迎えに行こう」
「待ってるよ。お鍋の準備とかしとく」
「うん……分かった」
パーカーに袖を通しながら、ユウはまた玄関までついてきた。
「じゃ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
楠木を連れて戻ったら、キスできないのか。
そう考えると、玄関から出づらくなった。でも早く迎えに行かないといけないし、ウダウダ悩む時間も無い。
仕方なくドアノブを掴むと、ユウの声がした。
「ヒロ君」
「ん?」
振り向くと目の前が暗くなりユウの唇が重なった。わずかに開いた唇に、軽く吸いつかれる。
「いってらっしゃいのチュウ」
「お、おう……ありがとう。行ってきます。すぐ戻るから」
「慌てなくていいよ」
ニコッと微笑むユウに元気をもらい、その勢いで車へ乗り込み出発した。
最初のコメントを投稿しよう!