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「君の言う通り、ここには宗田家の実態ってのを記事にしたくて潜り込んだんだ」
「分かったわけ?」
「いや、分からない。君は言ったね、自分には分からないから本人たちに会えって。その意味は分かったよ。謎だらけだ。俺は知りたいと思う。記事にする、しないじゃなくて」
パソコンにちらっと目をやり作業を始める。
「父さんに近づいてどうだった?」
「人生観が変わった……と言えば大袈裟かな。でも物ごとの見方はかなり変わったよ。そして友だちになってほしいと言われた。ある意味衝撃的だった。天下の宗田超愛が俺に友だちになってくれなんて」
手を止めて花が振り返った。怪訝な顔になっている。
「それほどのもん? 父さんはただの宗田超愛だよ。『天下の』って言われるようなもんじゃない」
「君は息子なのに分かってないね」
「ああ、無理。みんなさ、父さんのこと、そんな風に言う。確かに父さんって普通の人と考え方がえらく違う。俺だって教えられたことや助けてもらったことが何度もあるよ。いてくれて良かったって思うし感謝もしてる。でも祭り上げられるのを見るのははっきり言って気に食わない」
「2人ともそれを望んじゃいないし、興味さえ持ってないじゃないか」
「だから放っといてほしいんだ。あの2人はなんでもOKだけど、だからって利用されるのは御免だ」
リポーターだからこそ見えることもある。
「君は…… ご両親を大切にしてるんだね」
「はぁ? なに言ってんだか」
「だから無垢なままでいてほしい。君って人が変わるのを嫌がるタイプに見える」
花の顔が鋭くなる。
「分かったようなこと言うな」
「悪いけど君より君が見えてるよ。君はご両親が汚れていくのが見たくない。それを穢すものから守りたいんだ。でもあの2人にそんな心配は無用だと思う。君の保護が無くても立派にやっていくご両親だよ」
花は無言になった。
(ジェイに対してもそう? 俺は……前にも誰かに言われたっけ。俺の中のジェイを強いるのはやめろって……)
「使えるよ。どうぞ」
場所を譲る。小出があれこれ調べ始めた。
「せっかく来たから俺もホールに行ってくる。たまには長男の役目も果たさないと。……さっきの。考えてみる」
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