ディフェンダー・ストッパー

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  「ありがとう、花。相談して良かったよ。全部一並びに考えたからどうすればいいか分からなくなったんだ…… 焦ってたんだよな、陽子にカッコいいとこ見せたくってさ」 「その気持ち分かるよ。俺も最初マリエに間違ったことしちゃったからさ」  毎日帰ると楽しい話をしようとしていた。明るい話題を用意することに一生懸命になるあまり、もっと大事なことを見逃すところだった。 「普段知ってる相手だからこそ、違う自分を見せようとしちゃうんだよな…… ありのままでいいってこと、忘れちゃうんだ」  しんみりと話す花があまりにもいつもと違って。それを言っている相手が自分なのだと、浜田はそれが嬉しかった。だから素直に話すことが出来た。 「俺もさ…… 間違えたんだ、最初の結婚の時」  浜田がなにを言っているのかと、花もジェイも(え?)という顔になった。 「俺は最低の男だったんだ…… 聞いてもらってもいいかな」 「いいよ。今は……本当の浜ちゃんを知りたい」  花に小さく微笑んだ。  浜田は自分の封印していた過去の話を語った。どういうわけか、蓮や陽子に話した時より辛くはなかった。後悔も自虐も痛みも悲しみも、自分を打ちのめしはしなかった。 「だから……陽子にはいい夫になりたいんだ。幸せにしたい。俺も陽子と一緒にいて幸せだから」 「浜ちゃん……」  花の言葉が詰まる。何を言えばいいか分からない。 「浜田さん! 幸せになれて良かったね! きっと沙都子さんもそう思ってるよ。俺は母さんにもっと立派になってからじゃないとお墓参りできないって思ってたんだ。でもね、蓮が連れてってくれたよ。きっと母さんはただ喜んでくれるって。俺が幸せになることで母さんも幸せな気持ちになれるって」  ジェイは浜田の手を握った。 「良かったね。やっと沙都子さんも幸せになれるよ」 「ジェイ、俺な……俺お前と会えて良かった。お前の前じゃ取り繕うのが難しかった。でも少しずつ楽になってたんだなって分かるよ。自分のこと、話せる、ように、なって……」  花は涙を払った。笑顔が浮かぶ。 「浜ちゃん、俺は変わらない。今まで通りだ。それでいいんだな?」 「うん……それでいい…… それがいい。今まで通り。俺は花に変わってほしくない。俺もまだそう簡単には変われないからさ…… ありがとう」  
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