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ジェイを起こそうとして、花に止められた。
「これかけてやって」
毛布を渡される。
「いつもこんなの持ち歩いてんの?」
「ジェイなら寝そうだと思ったんだよ」
「起こさないって、ジェイをどうする気?」
「まず蓮ちゃんと話ししよう。それから連れに来ればいいよ」
「途中で起きないかな」
「大丈夫だと思う。これくらいの時間で薬切れないから」
車を下りて、なごみ亭までのちょっとの距離を花の傍らで歩く。
「本当に花はジェイの兄ちゃんだな」
「そう?」
「実の兄弟って言ってもおかしくないって思うよ。眠り加減とか毛布とか。よく分かってるなってさ」
「弟だからね。浜ちゃんだって御大層な兄貴を持ったじゃん! 取り扱い要注意ってこと忘れない方がいいよ」
「……そうかもしれない」
だがまだ実感がそこまで湧いていない。
「こんばんは!」
「花、浜田!」
今10時ちょっと前だ。それなりのお客さんがいる。蓮は眞喜ちゃんに耳打ちした。
「こちらへどーぞ!」
案内されたのは奥の座敷。眞喜ちゃんはすぐに出て行こうとした。
「眞喜ちゃん! 俺たち食べてきたんだよ。それで酒も要らないし。座敷なんかにいていいの?」
ここは店なのだから花もさすがに気が引ける。かと言って注文だけして食べないのもどうか……
「じゃ、お茶持って来るわね。何も無いと手持無沙汰でしょ。蓮ちゃんがここに通したんだから気にしなくっていいのよ」
眞喜ちゃんが出て行って2分もしない内に襖が開いた。
「お待ち」
お茶を持って入ってきたのは蓮。
「お店は?」
「大丈夫だ。源と眞喜ちゃんでしばらく回せる。なにかあれば呼ばれるが。お前たちこそ時間が無いだろう。ジェイは?」
「悪いけど外。駐車場に残してきたよ。そんな顔しないでよ! 眠ってるから風邪引かないようにしてきたから」
元々厳しい顔をしていた蓮の顔がキツくなってきたから花もちょっとビビっている。この顔の蓮を怒らせたくない。
(久しぶり…… 鬼の事前プレゼンみたいだ)
浜田は当然自分から口を開く気はない。背筋はピンと伸びている。もちろん正座。
「浜田、茶を飲め」
「はいっ! いただきます!」
器からして熱いが、それがどうした? と言われそうな気配だからなんとか一口飲んだ。
「こっちから先に話す。話は短い。本気でジェイを排斥するつもりらしい。俺が母を見舞いに行くのを見越してここに来た。住まいがどこかは分かっていないようだ。だが近々知るだろう。興信所がどうの言ってたからな。ただ手出しをしてくるかどうか、それは分からない。俺は異変を嗅ぎつけたら役員会に乗り込むと言ってある。そこでジェイとの結婚をバラすとな。あいつにとっちゃ一番の痛手のはずだ」
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