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「それなら安心なんじゃないの? いい歯止めになるでしょ」
「表向きはな。ジェイ1人になにもしないとは思えない。ジェイは素直過ぎる。言われるままに俺に言わずに自分の中に押し込める可能性は高いんだ」
「そしたらどうすんですか? どうやって守るっていうの?」
途中で蓮にギロッと睨まれたが、浜田は言葉を止めなかった。
「何も知らないジェイを籠の中に閉じ込めておくなんてできないでしょ。あいつが可哀そうだ」
「分かってる」
花は茶を飲みながらあることを思い出した。
「弁護士は? 西崎先生には聞いてみたの?」
「今日本にいないんだ。代わりにあの頃お世話になった遠藤先生に聞いてみたが、有効な手段はないと言っていた。お前の言う通りだった。一度入った戸籍はたとえ除籍しても名前が残る。だがあいつがそれを知らないとは思えない。知らなくても調べればすぐに分かるだろう。なにより俺がジェイを籍から抜く気が無い」
「なら心配のしようが……」
「浜田、あいつが壊れるかどうかの瀬戸際なんだ…… 今はいつ戸籍の記憶が戻るか分からない。あいつの一番の弱みは俺との繋がりが消えることだ。そこを突かれるだけであいつは……今のあいつは壊れてしまう…… ジェイの様子はどうだった?」
それを思い出して切なくなる。花にはあの笑顔が消えることは耐えられない。
「楽しんでたよ。浜ちゃんの結婚のことで父さんたちともいろいろ話してさ、本当に自分のことみたいに嬉しそうだった。浜ちゃんが大黒柱になるっていう話で、俺はなれないよって言うから大笑いした。……あいつを守りたい。方法を考えるの、多分至難の業だと思う。問題になっているのは戸籍からジェイが消えることだ。それは実質的にできないって分かってる。俺だったら……」
その先を聞くのが怖い。けれど浜田は聞いた。
「花だったら?」
真っすぐ浜田を見て抑揚のない顔で花は答えた。
「俺だったらそうなれば相手が再起不能になるまで叩き潰す」
ゾッとした。蓮が一番考えたくなかったこと。可能性としては浮かんでも、どこかに(実の弟なんだから)という気持ちが残っていたことに気づく。
(……花の言う通りだ。残っているのは復讐しかない。あいつがその道を選ぶのは時間の問題だ)
郁子の態度を思い浮かべる。彼女に煽られているのだろうと思う。だがそれだけではないだろう。消したと思っていた自分への反発心。それはきっと諒の中に根深く残っているに違いない。
(母さんが板挟みになる)
自分には足枷しかない……
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