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「よく眠ってるな。これじゃカージャックされても気づかないんじゃないの?」
浜田は本当に心配そうに言う。花は笑った。
「それ言えてる! 『ここどこー?』なんて聞きそうだ」
蓮は起こしにかかった。
「ジェイ、起きろ、ジェイ。家に帰るぞ」
「んんー、かえるの?」
「花の車に泊まる気か?」
「はなさんの?」
目を開けると花と浜田も一緒に覗き込んでいた。ふっと笑う。
「みんな、だぁい好き!」
「おれも…… おれもだよ、ジェイ」
「浜田さん、なんで泣いてるの?」
「なんでって…… いてっ!」
「俺が尻を抓ってるから。ちょうどいい角度で浜ちゃんの尻が突き出てるんだよ。なにかやってくれって」
「花さん! そんなことしちゃだめだよ!」
「分かった、もうしないよ。……しないって! お前兄貴を信じろよな!」
こんなやり取りがもし消えたら…… この瞬間一つ一つがどんなに大事か。自分も失いたくない。
(俺にもできること無いかな……)
浜田は自分なりに考え始めた。
「気をつけて帰れよ。俺は真理恵に嫌われたくない」
浜田はここに泊まることにした。花に送ってもらうわけにもいかないし、第一メルセデスにもう一度乗るのがいやだ。
「明日のこと考えると憂鬱だよ。マリエにウチの車運転して後ろからついてきてもらうつもりなんだけどさ、あいつ制限速度でしか走らないでしょ。ただでさえこの車目立つってのに。早朝か夜にするしかないんだ」
「悪かったな、面倒かけた」
「それは! いいって」
「花さん、ごめんね。でも今日は本当に楽しかったよ! ありがとう!」
「良かった。いいよ、お前に免じてマリエのスピードに合わせるよ」
「おやすみ、まさなりさんとゆめさんによろしくな! そんなに手間かけなくていいんだって伝えておいてくれよ」
「浜ちゃん、まだ俺の親を分かってないね。無駄なこと俺したくないから。じゃ、おやすみ!」
ジェイが手を振るのを、窓を開けて振返しながらメルセデスは消えていった。
「俺の親を分かってないからって」
「なにかしてもらうのか? まさなりさんとゆめさんに」
「そうなんだけど」
「じゃ、覚悟するんだな」
「ええ、それ、どういう意味!?」
蓮はにやっと笑うとジェイと浜田に「家に帰っとけ」と言った。
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