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家族
花と哲平と話したことで、蓮の表情がずい分と和らいだ。大丈夫だと2人に言われ蓮は座敷に戻った。新たに石尾と翔、リオが増えている。
「おい、こんなに人数いて大丈夫なのか?」
オフィスごとここに引っ越してきたんじゃないかと思うほど混みあっている。
台所仕事をするなと言われている真理恵は忠実にそれを守って部屋の隅でにこにこと座っていた。
「蓮ちゃん! あのね、お酒のつまみが尽きちゃったの。それで今田中さんと野瀬さんが買い出しに行ってくれてるんだけど」
「冗談だろ! さらに増えてるってことか? 家がパンクするぞ!」
真理恵が笑い転げた。
「ホントにパーン! って破裂したら面白いね!」
「笑い事じゃないだろ!」
「どうしたの? ちょっとイライラしてる?」
心配そうな真理恵の顔を見て、まだ不安定なのだと自覚する。
「あ、いや……心配なんだよ、正月からこんなにかき乱されちゃ大変だろうって」
「ううん。私ね、嬉しいの! 花くんって小さい時からね、ほんっとに寂しかったんだよ。でもあの通りの性格でしょ? 友だちなんてジェイくんが初めてだし。笑ったり怒ったりしてるけど、でも冷めてない。イヤになれば花くんが自分から言うから。今日は好きにさせてあげてね」
(花……俺たちも似た者同士か? R&Dを通じて人との本当の関りを見つけたんだよな。形は違うがお前とジェイと俺はきっとそっくりなんだ……)
花が怒鳴っている、もっと静かにしてくれと。
「もう! 浜ちゃん、いいから陽子んとこにくっついててよ! 中山さん! 有が泣いてる! 響子さんだけに任せて育児放棄なの!? 哲平さん、今の内に進抱っこしときなよ、野瀬さんが帰ってきたら取り返されるからね」
「花さん! ね、息が切れてるよ、かづくんに怒られちゃうよ」
「あ、ジェイ、内緒な!」
「お父さん、少し寝た方がいいと思う! 僕に内緒にしたらまたジェイくん、『できん』だからね!」
「かづくん、まだ内緒にしてないよ!」
だんだん可笑しくなってくる。すごく可笑しい……
周りはしんとなっていた。蓮ちゃんが笑い出している。苦しそうに、辛そうに、その笑い声は泣いているように聞こえて……
ジェイが背中に手を置いた。
「蓮。俺と少し散歩する? 疲れちゃってるんだね、外の空気吸いに行く?」
その肩を抱きしめて大声で笑いながら、途中から蓮は涙をぼろぼろと流していた。
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