家族

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  「蓮ちゃん……そんな風に笑ってたら……俺、辛いよ」  なぜか浜田がもらい泣きを始めた。蓮の笑い声と涙が切なくて切なくて。和田が、澤田が唇を噛む。  中山が立ってきた。 「蓮ちゃん。ずっと突っ走って来たね。きっと俺たちが知らないところでこんな風に泣きたいことたくさんあったんだと思う。でもずっと耐えてきた……」  蓮の肩に中山の手が載る。リオがそばに寄って来る。 「泣きたい時……泣いたらいいと思います。俺も蓮ちゃんのところで泣かせてもらった……あれから俺、辛いのが軽くなったんです。兄貴もそうだよ。俺たち兄弟を助けてくれて、でも蓮ちゃんは人を助けてばかりだ」  石尾は入社の頃を思い出す。 「俺も……助けてもらった。入社面接の時のこと、忘れてないです。あの時に鼻っ柱を折られて、だから今こうしてます。俺はいやなヤツだったけど…… でも今そうじゃなくなったのは蓮ちゃんとジェイのお蔭なんだ……」 「俺たちは河野組だよ。蓮ちゃん、俺もありさもそう思ってる。ここにいるみんな、俺たちは河野組だよな!」 「もちろんさ!」  哲平が誇らしく答える。 「蓮ちゃんが辞めたって俺たちが河野組なのに変わりはないんだよ。ずっと支えてもらった。守ってもらった。一緒に笑ってくれて泣いてくれて怒ってくれて…… 俺はさ、蓮ちゃんみたいにはなれない。『宇野組』を作っていく。それでもね、河野組から卒業することはないんだ。それを背負っていきたいって思ってる。な! そうだろ!?」  広岡はパニックを起こした自分を助けてもらったことを忘れない。陽子は母のことで『知らずに済まなかった』と言ってくれた言葉を胸に抱いている。翔は母の葬式に花や哲平が心配りをしてくれたのは蓮のお蔭だと教えられた。  途中から田中も野瀬も帰って来ていた。 「蓮ちゃん。あんたに救われた人間、どれだけいるか。俺もだ。あんたに嫌がらせするためにR&Dに残ってて良かった…… 離れたら終わりなんだよ。分かり合うなんてこと出来ずに終わる。あんたと一緒にいて良かった」 「蓮ちゃん…… 何が辛いのか俺には分かんないけど。でも分かるとか分かんないとかそれはどうでもいい。進のこと知った時、真っ先に考えたのは蓮ちゃんに知らせたいってことだった。辛いなら辛いって、もう言っていいんだよ。今度は俺が聞くからさ」 「俺は……笑ってるだけだよ。辛くなんか……」 「この強情っ張り!」  びん! と張った声が響く。ありさだ。 「せっかくなんだから泣いちゃいなさい! こんなこと滅多に無いんだから」 「三途……」 「最初っから見て来たわ。クレイマーさん。偉そうなことばっかり言うただのガキだろうって思ったのよ。そうなら私が潰してやろうって思ったの。でもね、ついてきて良かった! よく頑張って来たわ。今日はもうありのままの河野蓮司でいなさい。そして明日からまた突っ張んなさい」 「蓮、みんな蓮の家族だよ。こんなにたくさん……今日ここにいない人だって胸を張って同じこと言うって思う。『俺たちは河野組だ!』って」  なぜ涙が止まらないのか分からなかった。花が文句を垂れ流しているのが可笑しかったはずなのに。けれどこんなに『家族』を感じたことは無い。誰もが蓮を包んでくれた。泣きながら包んでくれた。  
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