家族

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   先に帰る者。新たに来る者。入れ替わりはあったが落ち着き始めた蓮を見る目は温かかった。後から来た者には誰かがそっと耳打ちする。 『今日は一時(いっとき)でも蓮ちゃんのそばにいてやってくれ』 『見てて辛いよ』 『きっとなにかあったんだ』  それが何かは分からない。ただジェイのこととは思えない。なぜならジェイがずっと心配そうに蓮を見ているからだ。 「主役は俺じゃない、真理恵と花とジェイだ」 「まあ、いいじゃないの。みんながこうやって集まるってのがいいんだからさ」  当の花がなんだかすごく優しい。 「お前が優しいと困る」 「今日は特別。俺には愛が溢れてんの」 「花ぁ! 俺にも愛を」 「陽子からもらって。俺の愛の行き先は限定だから」  ジェイはふわふわと嬉しい。いつも気遣われるのは自分だ。蓮はいつも頑張るだけで、こんな風に柔らかい笑顔で包まれることが少ない。 「どうした? まるで酔っ払ってるみたいな顔してるぞ」  そばに来た尾高がジェイの鼻をつっついた。鼻を両手で隠しながらジェイがもごもご答える。 「だってみんなが蓮に優しいんだもん。すごく嬉しい」 「そうか。お前もいい子だ」  くしゃくしゃされてその手から逃げる。頭を覆った。 「尾高さんまで! 俺、このままじゃハゲちゃうんだよ!」  さっと振り向いた蓮と、(しまった!)という顔の花。 「誰がそんなこと言った?」 「ジェイ、冗談で言ったんだよ、本気にするなって」 「お前、ジェイがなんでも素直に取るの知ってるよな?」 「怖いって、蓮ちゃん。ジェイ、あれは嘘だから。お前は絶対ハゲない。お前の頭はな、撫でまわされるためにあるんだ。お地蔵さんと同じ」  例えが悪い。ジェイの中でお地蔵さんの姿が浮かんだ。じわっと涙が滲む。 「頭……髪が無い」  思い切り哲平が花に肘を入れる。 「いたっ! 違うって! お前を撫でるといいことが起きそうだってそういう意味! いいことは俺にだけ起きてほしかったから他のヤツに撫でられるな、ってそういう意味で言ったの!」  
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