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散々遊ばれてしまって気持ちの悪さも今はどこかへ。それでなくても自分は……
(なにかやらかした気がするんだが……)
さっきの『口移し』事件で頭の中がぶっ飛んでいる。
「どーすんの? 飯、無理でしょ」
「無理。考えたくない」
横になって頭から布団を被ってしまう。2人のにやけた顔を見るのが嫌だ。だが中に籠り切ってしまう前に花が布団を取り上げた。
「だから! 被るなっつーの!」
「うるさい、返せ!」
目の前にぶら下がっている布団に手を伸ばす。途端に花は布団を背中に回した。
「だめ!」
「哲平、こいつの横暴、黙って見てる気か!」
「いや、俺に言われても」
2人とも蓮の我がままが嬉しい。それに。なんだか泣けてきそうで。
「ぁ……きも」
派手に動き回ったせいで忘れかけていた二日酔いがしっかり表に出てきた。あっという間に青くなった蓮の顔を見て2人は慌てた。
「哲平さん! ドア開けて!」
花が蓮をかついだ。哲平は廊下に怒鳴る。
「浜田! 手伝え!」
すぐに『男共用の部屋』から浜田が飛び出してきた。遅れて田中。足元の不安な蓮を花と浜田で抱えてトイレに連れて行く。蓮が盛大に吐いているところに真理恵がデカいペットボトルの水とグラスを持ってきて田中に渡した。
「後はよろしくね」
「分かった。悪いね」
「どういたしまして。でも蓮ちゃん以外の二日酔いは受け付けないから」
にっこり言う真理恵には田中も頭が上がらない。
一度だけたいして飲んでもいないのに酔いが回って真理恵に迷惑をかけたことがある。落ち着くまで世話をしてくれたが、落ち着いた途端真理恵に玄関を指差された。
「おやすみなさい、田中さん」
玄関にはビジネスバッグもコートも置いてあった……
蓮の世話は圧倒的に浜田がしてくれた。この前のインフルエンザの時から蓮の面倒を見るのは自分だという意識が生まれている。
「浜ちゃん、蓮ちゃんに甘いね」
「俺の兄貴だから」
「なにそれ」
寝耳に水の言葉に花、哲平、田中の眉間にしわが寄る。
「俺を弟だって思ってくれてるんだよ、蓮ちゃんは。自分のことは兄貴と思えってね」
ちょっと優越感に浸ったような顔。
(なんか、引っ叩きたい)
花の心にそんな欲求が生まれた。
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