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蓮の様子を見て、まだ横になっていた方が良さそうだとみんなは判断した。
「元気な顔見てから帰ろうと思ったんだが」
田中がまだ心配そうな顔を見せる。
「わるかったな、帰っていいぞ。おれはもう少し休んでいくから」
「そう言わないで。昨日あれだけ泣く姿を見たから気が気じゃないんだよ。みんなだってすごく心配していたんだから」
哲平が田中の気持ちを代弁する。
はっとした。
(そうだ……俺、昨日大泣きした……)
男共用の部屋に布団を敷いてもらった蓮は布団を掴んだ。すかさず花が上から布団を掴む。
「悪あがきしないの! いいじゃん、そんなこともあったって」
「河野さん。いや、蓮ちゃん。俺は昨日泣けて泣けて……」
脇に胡坐をかいた田中の顔がくしゃっと歪んだ。
「何があったか知らない。知らなくてもいい。でもどうしても言いたかった。俺がいる。俺たちがいる。だから……」
田中は慌てて袖で顔を拭った。
「だから! それを忘れないでほしい! いや、なにも言わなくていい! いいんだ、それだけ知っていてくれれば! じゃ、帰るから! 哲平、花! ……ついでに浜田! 後を頼む、蓮ちゃんを…… 蓮ちゃん、また店に行くから! 頑張れ、俺の知っている河野蓮司は頑張る男だ! 頑張れ!」
田中は立った。正直言ってちょっと引いている花も、家主として立った。玄関まで送るためだ。
「いい、花! 蓮ちゃんのそばについててやってくれ、頼む。みんな、蓮ちゃんを頼んだぞ!」
「ね、田中さんってあんなに熱い人だったっけ?」
さすがに哲平も呆れている。
「あれ、熱いって言うより『暑苦しい』って感じだったけど。俺田中さんの見方変わっちゃったよ」
「俺も……」
蓮がそう呟いたから3人がぱっと蓮を振り返った。
「あのさ、そりゃないんじゃないの? あんなに熱くなったの蓮ちゃんのためなのに」
「分かってる! 分かってるよ……有難いよ」
「蓮ちゃん、俺のこと、弟だと思うって言ったよね」
浜田の言葉に花と哲平は顔を見合わせた。蓮の実弟は諒だ。
「ああ、そう思ってるよ」
今度はその返事に驚く。
「本気で言ってんの?」
「浜田はいいヤツだよ。俺はこういう弟が欲しいって思ったんだ。悪いか?」
「悪かないけど。驚いただけ」
哲平も花も意外過ぎる仲の良さにちょっと耳を疑った。
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