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「じゃ、決まり! 悪いけど浜ちゃん、蓮ちゃん担当よろしく。陽子とのこと、もちろん並行してね。で、ジェイは1人にしないようにする。蓮ちゃんは西崎先生に聞く。俺と哲平さんは別枠であれこれ調べて動く。互いに情報交換、最優先で」
「蓮ちゃん。これ、多分短期決戦になると思う。辛い時は抱え込まないでほしい。渦中にいるのは蓮ちゃん自身だからさ、今までのことと違って冷静ではいられないだろうって思うんだ。だからなんでも話してくれないかな。互いに力を合わせて乗り切ろう! 花、お前は行動する前に俺に言えよ。黙って動くな」
その後蓮は少し眠った。その寝顔に浜田は安心した。うなされていた蓮を思い出す。
(良かった、苦しそうじゃない)
自分はずっと悪夢を見てきた。蓮にはそんなものを見てほしくない。
「浜ちゃん、今日時間はどうなの? この後予定は?」
「いや、特に。でも帰るよ。その方が」
「いいって思ってないから。そう思ったら俺は叩き出してる。俺は家では手抜きしないんだ」
「家では、って、手抜きしてる花を見たこと無いんだけど」
「言えてる! よく言うよな、少しは手抜きしろよ。会議でもお前の尻ぬぐいしてんのは俺なんだからな」
真理恵が用意していた昼食を温め直してくれて3人でわいわいと食事した。浜田には転機の年と言えるかもしれない。陽子との結婚。新たに生まれた、味わったことの無い関係。枯れていた人生に与えられる水をじっくりと味わっている……
「俺さ…… なんで蓮ちゃんに認めてもらえたのか正直なとこ分かんないんだ。でも嬉しくってさ。蓮ちゃんと関わって人生が変わった。その元を作ってくれたのはジェイだよ。だから俺にとっても2人は特別な存在なんだ。そこ、哲平にも花にも知っててほしいって思う。いい加減な気持ち持ってないから」
「分かってるって。俺、確かに浜ちゃんのこと戸惑っているし、会社でも変わる気なんかないけど。それとは別もんだって今は知ってるから。それでいいだろ?」
「その方がいい。いきなり花に優しくされたら気持ち悪いし。今さら会社では俺、変われないよ。正直言って会社で責任ある行動すんのは苦手、いてっ!」
両方からゲンコツが降った。
「このヤロー、部長の前でそれ言うか? 仕事で責任ある行動を求められるのは当たり前だろっ」
「いや、それがさぁ、そう上手くはいかないんだなぁ。あそこではクラゲみたいにしてんのが楽だし」
「会社で『楽』を求めんのはR&Dではお前くらいのもんだ」
「いいよ、会社で浜ちゃんにヤキ入れんのは今まで通り俺担当!」
「それ、有難くない」
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