限界

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限界

   あの後、帰ってきたジェイにもひどく心配された。蓮が声を上げて泣いたのだ、それもR&Dのみんなの前で。それはジェイにとっても衝撃的だった。  子どもたちを連れ出したのは蓮をゆっくり休ませたかったからだった。二日酔いの蓮には子どもたちの元気な声はきっと痛みしか与えない。花や哲平にも『子どもたちをどこかに連れていってくれないか』と頼まれた。    月曜、蓮はジェイのいないところでスタッフに頭を下げた。 「実は今、ジェイを1人にできない状況になっている。みんなに迷惑をかけたくはないんだが妙な客がジェイに声をかけたら教えてくれないか?」 「それって何か事件に巻き込まれてる?」  源の顔がピリッと引き締まった。これまでのこともある。伴も真剣な顔だ。事と次第によっちゃ親父っさんに報告しなくちゃならない。花にも連絡しないと後で絞められる。  眞喜ちゃん、匠ちゃん、凛子ちゃんもジェイのことは人一倍気になる。 「事件ってわけじゃない。ただ……絡まれる可能性があるかもしれない、それだけなんだ。済まん、はっきりしなくて。でも今のあいつは何かあったらまた記憶が……」 「任せて!」  眞喜ちゃんがきっぱりした顔で答えた。 「時々ね、ジェイが壁に手をついて一生懸命何かを考えているのを見てると私も辛いの」 「眞喜ちゃん! それ、いつの話だ?」 「いつって……先週も一度あったし。12月も何度か…… 知らなかったの!?」 「あいつ…… 何も言わないから」 「一度聞いたのよ、『具合悪い?』って。『時々頭痛がするだけだから大丈夫』なんて言ってたけど。『蓮ちゃんは知ってるの?』って聞いたら『知ってるから』って……」 「きっと蓮ちゃんに心配かけたくないのね。私も気をつけます!」 「俺も! すぐに『マスター!』って呼ぶから。接客も俺が代わる!」 「済まん、いつもありがとう。頼むよ、みんな」  眞喜ちゃんの話を聞いて蓮はジェイの様子に気をつけた。けれど蓮の前ではジェイはいつも変わらず明るい笑顔を見せていた。  
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