限界

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   今日は22日。母の検査入院の日だ。明日が退院となれば行けるのは今日だけ。ジェイに母の検査のことを言うわけにはいかないが、花がいい案を出してくれた。  昨日のランチ後、休憩で上がったところに花が蓮に電話をしてきた。蓮はさりげなくスピーカーにした。 『あのさ、悪いけど頼みがあるんだ』 「花さん! どうしたの?」 『蓮ちゃんに明日運転手をやってほしいんだよ。退院後の検査受けに行きたいんだけどマリエが俺に運転するなって言うんだ』 「当り前だよ! そんなのだめだよ!」  ほとんど蓮が喋る必要もなく、ジェイはランチが終わる頃には蓮に迎えに行ってくれるようにと頼んでいた。 「真理恵に安心するように言ってくれ。客足も少し引くだろうから1時頃にこっちを出る」 『悪いね。ジェイ、明日の昼、頑張れよ』 「了解っ!」  そのお蔭で蓮は1時近くにはジェイに追い出された。 「花さんのこと、お願いね。すぐ無理するんだからちゃんと言うこと聞かせてね」 「分かった、分かった! 相手は大人だぞ」 「でも花さんだもん!」 (確かにそう思うよな) あの会話を思い出して車の中で1人くすっと笑った。真理恵も承知してくれている。だから安心して店を出た。  河野家が昔から懇意にしている病院に入る。この病院を辞めて開業したのが主治医の増田だ。病室を受付で確認してエレベーターで上がった。  個室からは母ではなく、少しキツイ声が聞こえていた。それに答えているのは利恵の声だ。蓮は入り口の近くで立ち止まった。ドアではなく、カーテンだ。 「ですから奥さまのそばには私がおりますので」 「でもね、ここは病院ですよ。なにが心配なの? あなたは使用人になったんですから私の指示に従いなさい。今夜お客様があるのだからその支度をしてちょうだい」 「いえ。その手配なら済んでおります」  母の声が聞こえないことに不安を感じて蓮は入り口のそばの壁をノックした。  
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