ディフェンダー・ストッパー

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  「価格ってどうなの?」  いつかはキッチンを任されたいと思っている眞喜ちゃんとしては気になるところだ。 「ホントは結構するんだよ。でもよく行く青果店……蓮のこと助けてくれた市場のお兄さんって知ってる?」 「知ってるわよ! 源ちゃんにね、何回か市場に連れてってもらったことがあるの。すごくいい人だった!」 「そうなんだよ! それでね、あのお兄さんが規格外の青果を仕入れてくれてるんだ。形が崩れてたりちょっと色が微妙なもの。味には何の問題もないんだけど普通は廃棄になるんだよ、市場には出されないで。でもそれってもったいないよね」 「そうね、私も八百屋さんでそういうのを買うわ。だってなんともないのに安いんだもの。廃棄になっちゃうの?」 「そうなんだ。ウチで鍋ものとか炒め物とか、そういうのに使ってるのはそれだよ。結構いい食材がすごく安値になるから仕入れ値を抑えられるしね」 「そうなの…… 経営ってそういうものなのね」 「俺、バランスシート……賃貸対照表っていうんだけど、その担当だから。決算するのは店長の役目だからね」  ジェイがちゃんとそういうことを把握していることを改めて知った。どこか蓮ちゃん任せにしているようなジェイは、経営者というよりスタッフ長に見えて。 (失礼なこと思ってたわ) 眞喜ちゃんはひどく反省している。 「それでね、今日のデザートには型崩れしてるところを除いて出したの。残ったところはペーストにして明日のデザートに使うつもりなんだ」 「ジェイ、すごくいい勉強になったわ。そういうのもっと教えてちょうだい」 「俺でいいの? 蓮じゃなくて」 「ジェイにも教わりたいのよ。2人のいろんな知識を知りたい。そういうノートを作って匠ちゃんと一緒に勉強するわ。いつか一緒にキッチンに立ちたいから」 「すごい! うん、それすごくいいって思う! 俺も手伝うよ。料理人が5人いたら店が強くなるね!」  眞喜ちゃんはほとんどする必要のない相談を持ち出すことなく責務を果たせていた。けれどと匠ちゃんが届けてくれた軽食を食べている内にとうとうジェイが時計を見た。 「わ、こんな時間! 遅刻だよ、急がないと!」  店からはまだ連絡が来ない。眞喜ちゃんは次に打つ手を考えたがいい方法が浮かばない。  そこにチャイムが鳴った。  
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