ディフェンダー・ストッパー

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   蓮は鳴った電話をすぐにスピーカーに切り替えた。 『眞喜子です』 「どうなった!?」 『さっきまで私が一緒にいたの。今は浜田さんと一緒。これからジェイを連れ出すそうよ』 「浜田が?」 『任せていいって、そう言ってくれたわ。だからジェイは大丈夫。お店はスタッフルームからちょっと覗いたんだけど、源ちゃんが上手いことあしらってる。すごいわね、源ちゃん! ジェイの情報は全く漏らさないで話を繋いでるの』 (助かった! 源、恩に着る!) 「もう30分もかからないと思う。なんとか持ちこたえてほしい」 『それならきっと大丈夫。さっき聞こえた範囲ではジェイの住まいを聞き出そうと頑張ってたから』  普段なら笑えるが、今はとてもじゃないが笑えない。 (ジェイを狙い撃ちか。二度とそんな真似はさせないからな!) 「ねぇ、どこに行くの?」  家を出て浜田と一緒に街を歩いている。あったかい格好をしろと言われたからハイネックにダウンだ。言われて手袋までしている。 「陽子にさ、指輪を買いたいんだよ。それから陽子のお義母さんに誕生日プレゼントも買いたい。あと、2月7日に籍入れるんだけどさ、どっかで1泊したいんだよね。その相談にも乗ってほしいし、それから」 「待って! 待ってよ、俺にそんな相談しても無理だよ!」 「どうして!」 「だってそういうの苦手だもん。花さんは? 俺よりもそういうの詳しいよ」 「あ、だめ。あいつはきっと俺をオモチャにする。いい知恵はあるだろうけど、イジメにも遭いそうだからいやだ」 「じゃ……三途さんは?」 「冗談だろ、言われたらもうそれ買うしか無いし。俺は貧乏人なの」 「えと、そしたら」  浜田は立ち止まった。 「つまりさ、ジェイは俺の相談には乗りたくないってこと? もう日にちが無いんだ。今日は22日だろ? 後2週間くらいしかない」 「もっと早くすれば良かったのに」 「結婚決めたの、先週だよ! 無理だよ、そんなの!」 「うん……ごめんなさい、浜田さんの気持ち考えてなかった。でも本当に自信無いよ。例えば……柏木さんとか」 「R&Dの連中には相談したくないんだよ。陽子にバレちゃ困るから」 「じゃあ、じゃあ、……」  ジェイの頭が忙しなく動く。誰か頼りになる人。R&Dにあまり関りの無い人。そういうものを選ぶのが上手な人。泊まる場所に詳しい人…… 「浜田さん! いい人がいたよ! そこに行こうよ、きっと力になってくれるから!」  ジェイが思いついた相手は、ある意味『ヤバい』相手だった。  
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