ディフェンダー・ストッパー

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「いなかったら困るから聞いてみるね」  ジェイが電話をかけるのを見て、浜田は浜田でちょっと困っていた。 (どうしよう…… ジェイに知恵が無いの分かってたからデパートをうろうろして終わりにできるって思ってたのに……) 思いの外具体的になりつつあり、自分の計算があっという間に狂いつつある。 「ジェイです! こんにちは。今日お出かけの予定ありますか? もし大丈夫なら今から行ってもいい?」 『…………』 「ありがとう! じゃ行くね。よろしくお願いします!」 「大丈夫だって!」 「誰? どこ行くの?」  ジェイはにっこり笑う。 「まさなりさんのとこ。浜田さんの心配したこと、全部クリアでしょ?」 (全部クリア…… 大前提がクリアじゃないよー)  本当は新しい関係になった花にお願いするつもりだった…… 「俺が行っても大丈夫なの!?」 「大丈夫だよ。まさなりさんのとこには誰が行っても大丈夫なんだ。それに俺、仲いいし」  浜田は直接喋ったことが無い。確かに柔軟な考えを持っている人だと思う。ジェイと蓮の結婚披露宴の時を思い出すと、じんわりと心が温かくなる。あの時のまさなりさんの言葉には感動した…… (畏れ多い…… 本当にあのお父さんから花が生まれたのか? ……いやいや、産んだのはお母さんだけど) そんな思いがある。しかも浜田はまさなりさんのスケールの桁が違うことを知らない。ジェイは慣れてしまったのか、まさなりさんとはそういう人だと素直に思うようになっている。  電車で行った。駅からはタクシー。 「宗田さんの家までお願いします」 「はい」  これで通じる。あの邸宅を知らないタクシー会社は、流しのタクシー以外にはない。『宗田さんの近くまで』『宗田さんの前をまっすぐに』こんな言葉が通じる。これは『三途川さんのところまで』とたいして変わらない。 「いいのかな」  弱々しい悪あがきをする浜田。 「大丈夫!」  自信たっぷりのジェイ。全部解決すると疑っていない。ただし『形は違うかもしれないけれど』という言葉はついていないが。  
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