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「あの、そんなに大変なことじゃないんです。イジメるというより、楽しんでいるというか」
「楽しんで? それが問題なんです! そんな感覚を……悪いことをしながらそれを楽しむだなんて…… それなのにあなたはさっき、花のために怒ってくださった。なんて、なんて心の広い方なんだ…… あなたの心は美しい。なのになんということをしてしまったんだろう……」
浜田は再度立ち上がって「どうぞ座ってください」と2人に促した。座ったのを確認してから自分も座る。さっきより気持ちが落ち着いていた。
(木を思い出そう。素直に話すんだ)
「まさなりさん。ゆめさん。どうか聞いてください。俺は花が好きです。ジェイもきっとそんなつもりで『イジメ』という言葉を使ったんじゃないです。そうだろ?」
この間、ジェイはどうしていたかというと、改めて花の子ども時代の話を聞き一緒に泣き、何度も涙を袖で拭い、そして黙って聞いていた。いきなり浜田に話を振られて、また余計な言葉を使う。
「うん、違うよ! 花さんは浜田さんで遊んでるんだよ」
2人の顔色がさらに悪くなる。
「違うだろっ、そういうことじゃない、俺と花は仲がいいって話をしてるんだ!」
ジェイはきょとんとした。
「仲、悪かったの? 俺にはそんな風に見えなかったけど。楽しそうだなって。花さん、嫌いな相手とは話しないし、顔だって見ないようにするし。近寄ってきたら怒鳴るし」
(それはそれでどうかと思うぞ。2人は余計泣くだろ!)
だが2人はなぜかホッとした顔に変わっている。
「ゆめさん、それは私たちにしていたことと同じだね」
「そうね、良かった……」
またゆめさんが泣いているが、どうやらさっきとは違う意味で泣いているらしい。浜田にはよく分からない。
「だからね、花さんは浜田さんといて楽なんだと思うよ。浜田さんと話してる時って子どもみたいな顔してるし。言いたいこと言える相手って、なかなかいないし。浜田さんは花さんにとって特別な人なんだと思う」
ジェイの言葉は浜田には目から鱗だった。
(そんな風に見えていたのか?)
「ジェイ、そう見える? 花は俺を好きなの?」
「もちろんだよ! そうじゃなきゃ自分からそばに行かないよ! ちょっと不貞腐れた時なんか浜田さんのそばに行って理不尽なこと言い出すでしょ? その後ちょっとすっきりした顔になってるし。だから花さんには浜田さんが必要なんだと思う」
褒めているんだかいないんだか。怪しいところが多々あるが、みるみる目の前の純真な2人の顔が明るくなっていく。
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