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「じゃ、ジェイ、帰ろうか」
「どうして?」
「花のことよく分かったし、自分の気持ちもよく分かった。連れてきてくれて嬉しかったよ」
立ち上がりかけた浜田はジェイに捕まった。
「だめだよ、大事なこと忘れてるでしょ? 今日はまさなりさんたちに相談があって来たんだから」
「え、いいよ、もう!」
浜田は本当に来て良かったと思っている。だからそれに関してはジェイに感謝だ。けれどジェイが今から言おうとしていることについては、出来ればジェイの口にガムテープでも貼って黙らせたいのだ。
「何かあるんでしょうか?」
ゆめさんが小首を傾げる。
「お役に立てることがあるのならなんでも仰ってください」
まさなりさんが『是非!』という顔をしている。
「いえ、大丈夫です。なんとでもなりますので」
「どうしようって言ってたでしょ? もう時間が無いんだって。相談する人もいないって。俺なんかに相談するなんてよっぽど切羽詰まってなきゃ考えないでしょ!」
ジェイはそういう部分では達観している。考えの及ばない範囲というものがある。その範囲が、自分の場合は広い。とてつもなく広い。この年にしては知らないことが多過ぎる。だからといってどうにもならない……
それでも困っている人がいれば誠心誠意一緒に考えて、悩んであげたい。
(俺に出来るのはそんなことだけだから)
役に立ちたいのだ、いつも。自分が関わることで問題が解決する。それはジェイにとって快感だ。
そして、浜田はジェイに美味しいご馳走をくれたのだ。
「あのね、浜田さん、自分では言い出しにくいみたい。だから代弁してもいい?」
「いいよ。そうか、浜田さんは言いたくないんだね? そうなんでしょう?」
まさなりさんにそう聞かれて、浜田は「はい」と答えてしまった。
「大丈夫、あなたからは何も聞きませんよ。なんなら別室でお待ちになりますか?」
「まつ、って? なにを?」
「私とジェイのお喋りをです」
なんだか罠にかかったような気がする。自分は言いたくない。まさなりさんも聞かないと言ってくれた。なのに……
『ジェイとお喋りする間、別室で待ってていいよ』
「あのっ、本当にいいんです!」
「ええ。大丈夫。私が聞きたいのは、ジェイの悩みです」
「ジェイの?」
「はい。ジェイ、誰かお友だちのことで悩んでいるんだね? 私は誰のことか聞かないよ。そうすれば君も困らないだろう、君の悩みなんだから」
ジェイは今のまさなりさんの言葉をすんなりと受け入れた。
「ありがとう! そうなんだ、俺ね、とても困ってることがあるの。ある人を助けたいのに、俺には助ける力も自信も無いんだ」
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