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ジェイは浜田の悩みを自分の言葉でまさなりさんに語った。
「それは大変なことだよ! 人生を共に歩む人に捧げる指輪。最初の一夜。そして最愛の人のお母さんへの思い…… なんて…… 言葉に尽くせないほどの感動を感じる…… 私は君たちが帰った後、絵を描きたい。心が高鳴る。君は? ゆめさん」
「私は…… 私の指が音を求めているわ…… 今日は新しいメロディが書けると思うの。浜田さん、あなたとあなたの奥さまになられる方のために曲を書きたいと思います。お許しいただけますか?」
「え、あの、」
浜田には残念ながら分かっていない。世界的なピアニストであり、バイオリニスト。そして作曲家である宗田夢が、自分に捧げる曲を書きたいと言う。それがどういう意味を浜田にもたらすのか。
クラシックの世界を多少なりとも知っていれば慄くだろう。平たく言えば『エリーゼのために』をベートーベンが作曲したことにより『エリーゼ』とはそも誰ぞや? と注目を浴びた。これに似たようなものだ。だが知らない。ある意味、幸せだ。知らずして伝説の人になる。
女性に『許していただけますか?』と聞かれれば返事は一つだ。
「はい」
そしてゆめさんは見事な『君あればこそ』という曲を創ることになる。
まさなりさんはというと、彼にしては珍しく抽象画を描いた。タイトルは『愛を語る友よ』。見る人が見ればたいした絵らしいのだが、取り敢えず花はその人たちに(物好きな連中)と肩をすくめた。
さて、芸術界に一方ならぬ貢献をする浜田ではあるが、当の本人は今、ただ焦っているだけだ。
(やばい、デカい話になったらどうしよう)
なにせ蓮ちゃんとジェイの結婚披露宴を見ている。いやな予感しかしない。
「えっ……とですね、そんなに大袈裟なことをしたいわけじゃなくって」
「浜田さん! 俺の相談なんだよ! 浜田さんには関係無いから!」
「そんな、ばかな」
ジェイの頑なな姿勢に早くもずるずると引きずられ気味になる浜田。携帯が震え、着信の相手を見た。
「すみません! 急ぎの電話が入って、どこかで話できますか?」
お礼ももそこそこに近場の部屋を借りて、着信相手にかけ直した。
『ごめん、どうなってんのか聞こうと思ってさ。今いいの?』
「いい、今がいい!」
『で、どこにいんの?』
「お前んち! ってかさ、お前の実家! えらいことになってるんだよ、助けてよ!」
『父さんとこ? なんで!』
「お前からの任務を果たそうとしてそうなったんだ、責任はお前にあるからな!」
『ちょっと、意味分かんない!』
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