ディフェンダー・ストッパー

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   後部座席では子どもたちが賑やかにしり取りをしている。たまに思ってもいない難しい言葉が飛び出すと、(お!)となるのは仕方ない。花だって親バカなのだから。その賑やかさの中で蓮に電話をかけた。 「俺! ごめん、子どもたちがいるからうるさくて! ジェイは浜ちゃんと父さんのとこだから今そっちに向かってる! 悪い、もっと大きな声で言って!」 『諒に塩、ぶっかけて追い出した! 安心してこっちに帰してくれていい! 花! 助かったよ!』 「俺じゃないよ! 浜ちゃん! 悪い、ちょっと遅くなるかも!」 『分かった! 頼む!』 「了解!」 「花くん」 「なに?」 「電話で大声で話さなくても子どもたちに『静かにしなさい!』って言えばいいんだよ」 「だって仲良く遊んでるし」 「そういう甘やかし方が子どもをだめにするの。親がしっかりしなくっちゃ」 「けどさ」 「花くんはまさなりさんと違う子育てしたいって思ってるんだろうけど、そういうとこは似てるからね。もう花月は花くんにお説教するようになってきたでしょ? あれ、花くんの子どもの時とそっくり!」 「やめて、マリエ。聞きたくない。俺は父さんと違う!」 「そう思うのは花くんの自由だけど。ジェイくんを甘やかすとこなんかもそっくりだから。本当にまさなりさんと花くんはよく似てるって私は思うよ。やっぱり親子だよねぇ」 (う! ……痛いとこを……) だから真理恵は怖いのだ。  チャイムを鳴らす。こういう時に子どもたちは特有の力を発揮する。孫の特権だ。招きを待つこともなくドアを開けて中に飛び込んでいった。 「来たよー、夢……お祖母ちゃん、まさなりパ……お祖父ちゃん」  花父が一緒だ。『お祖父ちゃん、お祖母ちゃんが正しい』といういつものお説教を聞くのがイヤで花月はなんとか言葉を方向転換した。 「まあ! 花月、花音、和愛ちゃんも来てくれたのね! 今日はなんて素敵な日なんでしょう! 真理恵ちゃんもいらっしゃい。まさなりさんのご挨拶、ちょっと待ってもらってもいいかしら。今ね、ジェイくんとお話ししてるのよ。あ、花、浜田さんという素敵な方も見えてるわ」 「素敵な方?」 「そうよ! まさなりさんも私もすっかり虜になってしまったわ」 (虜…… 浜ちゃん、いったいどんな魔法使ったのさ)  
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