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改めて考える。特別な存在ではなかったはずの浜田のことを。
(父さんと母さんが認めたってことは、浜ちゃんはやっぱり『いい人』だったのか…… ジェイだって言ってたもんな、『浜田さんはいい人だよ』って。確かに一緒にいて楽なんだけど。気を遣ったこともなかったし)
父と母とジェイの感覚が一致しているなら間違いない。3人に共通しているのは人を正しく見る力だ。花はそこを疑ったことは無い。
「父さん、何をそんなに真剣に話してんの?」
「ジェイくんの悩み事を解決しようとしているのよ。あのね、ジェイくんの相談なの。浜田さんからじゃないのよ。まさなりさんは間違わないようにちゃんと『けじめ』をつけているから」
なごみ亭に送ったクリスマス用のプレゼントの個数のことで花は説教をした。
『相手が望んでいるかどうか、そこを考えなくちゃだめなんだよ。相手が何を求めているか。父さんも母さんもそういうのを考えなさすぎなんだ。過ぎた好意はいいこととは限らないってこと。ものごとには「けじめ」っていうものがあるっていい加減に分かれよ!』
浜田が陽子との結婚のことで父と母になにかしてもらうことに強い抵抗を感じるのは当たり前だと思う。けれどどうやら父は浜田ではなく、ジェイの悩みを聞くという形で抜け道を作ったようだ。
(変な知恵をつけてきたな)
少しずつ『学習能力』を身につけつつある2人だが、それはもっと違うところで伸ばしてほしいものだ。
「ジェイの相談なら俺も聞きたい。今夜はここで夕飯食べていきたいんだけどいいかな」
「もちろんよ! まぁ、何を作ろうかしら!」
子どもたちはさっさとどこかに消えてしまい、母と真理恵はお喋りしながら仲良く台所に向かう。
(マリエ、いつも感謝!)
なんの抵抗もなく母の相手が出来るのは真理恵くらいのものだろう。
「ジェイ、元気か?」
「花さん!」
「はなぁ……」
浜田は泣き出すのを堪えている子どものような顔をしている。
「母さんに聞いたけど父さんに相談したいことがあるんだって?」
「うん、あのね」
ここでジェイはハッとした。
(浜田さん、花さんには相談したくないって言ってた)
浜田は自分で自分の首を絞めたことを忘れている。ここで何が話題になっているのかが明るみになれば花がなんとかしてくれるはずなのだが。
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