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「最初は『入れ替わり』も(まば)らだった。夕陽と共におれが出て来ても、夜になったら朔に変わることなく耀に戻ることもあった。完全に確立したのはここ数日」  そうなんだろうな。  家庭教師の時間だって夕方や夜に掛かるけど、ヘンだと感じたことなんてなかったんだ。  そうだよ、塾だって。  あの、俺と行き会った時の朔の様子からして、入れ替わった状態で耀くんで通る筈がないんだから。  第一、毎日夜遊びなんて続くわけない。 「……朔、くんが耀くんに戻る、っていうかなる、のは?」 「朔が夜の間に眠って、朝起きたらそれはもう耀。厳密には、太陽が昇って完全に夜が明けるまではおれの時間」  この子()は夕陽、と朝陽に左右される存在ってことなんだろうか。 「だけど、まるでプログラムされてるみたいに、朔は夜が終わる前に必ず眠る。朝になって、目覚めたらもう耀になっている。『知っているけど知らない』のも、プログラムのひとつ。考えたら崩れるので、それについては何も考えない。そして、おれはどこまでも『(あいだ)』の存在。そういうメカニズム」  ……メカニズム。こういう場合に使う単語なのか?
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