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いや、相応しくないとは言わないけど、どうも座りが悪い、ような。
それは俺が、この入れ替わりの『メカニズム』を現実として捉えられてないからなんだろうか。
俺の内心の混乱なんて気にする素振りもなく、汐は話し続ける。はじめから聞き手なんて必要としていないみたいに。
「元から居た耀か、後から生まれた朔か。どちらかが相手を消したらおれも消える。『五十嵐耀』の身体はそのまま、誰が心を支配するのかはわからない。このまま二人で共生していくのかもしれないし、……衝突してどちらも壊れてしまう、のかもしれない」
汐は一切感情を乗せない冷たいほどの声で、相変わらず調子だけは歌うように仮定を並べて行く。
その噛み合わなさが、逆に生々しさを際立たせているようだ。
いや、そもそもこの子には『感情』なんてものがないのかもしれない。
間の存在。
情報を伝達する人形のように、機械のように、プログラムされた通りに形だけなぞった抑揚をつけて。
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