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 向かったのは、耀くんの通う中学校だ。  彼は部活もしてないし、というか、してても中三のこの季節じゃもう引退してるか。  校門を見通せる曲がり角の歩道で、俺は次々吐き出されて来る制服の群れをじっと観察する。  万が一見逃したらもう仕方ない、と割り切ってはいたものの、同じブレザーを着た少年たちの中から無事に目当ての一人を見つけ出すことに成功した。  誰かと一緒だったら遠慮しようと思ってたけど、耀くんは門を出たところで連れの友人たちと左右に別れて一人俺の方に向かって来る。  彼らとは家の方向が違うんだろう。  まずは第一段階クリア、ってとこか。 「耀くん」  曲がり角に一歩下がって身を(ひそ)め、目の前に差し掛かった彼の名を呼ぶ。  まったく想定外の出来事の筈なのに、耀くんは俺が予想したほどの驚きを示さなかった。
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