【2】

4/24

70人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「牟礼先生。どうなさったんですか? 今日は家庭教師の日じゃありませんよね?」  相変わらず穏やかな、でも少し不安そうなのは俺の先入観のせいか? 「あ、うん。そうなんだけど、ちょっと君と話したくて。今日は塾もないよね? ……時間、いい?」 「ええ、大丈夫です。実は僕も、先生とお話したかったので」  そんな風に返されて、俺の方が動揺しそうになる。  だけど怖気(おじけ)づくわけにいかない。 「じゃあ、……夕ご飯は帰ったら食べるよね。ちょっと歩くけど、駅の向こうのカフェでも行こうか」 「すみません。寄り道は校則違反なので、その」  俺の提案に耀くんが困惑を見せる。そういえばまだ中学生か。そりゃそうだ。 「保護者が一緒でも? もしダメなら、そうだなぁ」  どうしようか、と考えを巡らせる俺に、耀くんは安心したように答えた。 「ああ、保護者同伴なら大丈夫です。そういえば、先生も大人だし保護者なんですね」 「そうか。ならよかった。……行こう」  俺は彼を促して、駅の方角へと歩きだした。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加