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「牟礼先生。どうなさったんですか? 今日は家庭教師の日じゃありませんよね?」
相変わらず穏やかな、でも少し不安そうなのは俺の先入観のせいか?
「あ、うん。そうなんだけど、ちょっと君と話したくて。今日は塾もないよね? ……時間、いい?」
「ええ、大丈夫です。実は僕も、先生とお話したかったので」
そんな風に返されて、俺の方が動揺しそうになる。
だけど怖気づくわけにいかない。
「じゃあ、……夕ご飯は帰ったら食べるよね。ちょっと歩くけど、駅の向こうのカフェでも行こうか」
「すみません。寄り道は校則違反なので、その」
俺の提案に耀くんが困惑を見せる。そういえばまだ中学生か。そりゃそうだ。
「保護者が一緒でも? もしダメなら、そうだなぁ」
どうしようか、と考えを巡らせる俺に、耀くんは安心したように答えた。
「ああ、保護者同伴なら大丈夫です。そういえば、先生も大人だし保護者なんですね」
「そうか。ならよかった。……行こう」
俺は彼を促して、駅の方角へと歩きだした。
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