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俺の言葉を聞いた耀くんは、詰めた息を吐くようにしてどこか感心した様子で返して来た。
「……先生って、あの、こんな言い方は本当に失礼なんですけど。俳優さんみたいに格好いいし優しいし、鋭そうには見えないのに、やっぱり塔都大の学生さんだけあって洞察力が凄いんですね」
偉そうですみません、と再度小さくなって謝る耀くんに、俺は気にするなと手を振って見せた。
それどころか、過分なお褒めの言葉にかえってぎこちない仕草になってしまう。「俳優さんみたい」なんて、今まで生きて来て耳にしたこともない評価だからな。残念ながら。
彼はお世辞なんかじゃなく、おそらくは本心からそう告げてくれていると伝わるから余計に恐れ多いわ。『先生』フィルター強力過ぎだろ。
「そんな大層なもんじゃないよ。耀くんがさっき言ったみたいなことを信じてる人が居たとしたら、耀くんやお母さんのことなんて碌に見たこともないんじゃないか? 『耀くんが才華の中等部を辞退して、英深の高等部を志望してる』って単なる事実からの、勝手な想像というか妄想でしかない気がする」
俺の、忖度も何も含まない真っ正直な感想に、耀くんの表情がさらに柔らかくなった気がする。
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