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安易な慰めは失礼だろう。
でも、それ以外にどうすべきかも俺にはわからない。
両親が健在で、実家を離れて東京の大学に通わせてもらってる平凡な俺には、耀くんの抱える寂しさも痛みも、真の意味では理解することなんてできないからだ。
できるなんて軽々しく口にしちゃいけない。
そういうわけで、俺はただ黙っていた。
結局、その程度の人間なんだよな。便宜上でも『先生』なんて呼ばれる器じゃないんだよ。──ゴメン。
「だから僕は、英深学院に行くのが夢でした。せめて同じ学び舎で、父と同じ景色が見たい。同じ経験がしてみたかった。そのあとも、父や先生と同じ塔都大学に進みたいんです」
「そうか。だから高等部で再挑戦したいんだね」
今までだって、耀くんがどうしても英深に行きたがってることくらい俺にもわかってた。
そりゃあ最難関の学校だから「どうしても行きたい」子は別に珍しくないし、俺もそれ以上考えたことはなかったんだ。
本当の理由は今初めて知ったことになる。
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