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才華学園は完全中高一貫で高校入試はない。
確かに英深学院より偏差値は僅かに低いかもしれないが、両方に受かって才華を選ぶ子もいるらしい。主に校風との相性を考えて、と聞いたことはあった。
あの学校はアットホームというのか、教員も生徒も和気藹々なイメージが強いんだ。
同じトップレベルの進学校でも、自由闊達な校風で個性が強い生徒が多い英深とは少し持ち味というか雰囲気が違うんだよな。
言うまでもなく、どっちがいい悪いの問題じゃない。
俺の大学の同級生にも両方の出身者がいるけど、少しタイプが違う気はする。とはいえどっちの学校卒でも、みんなそれぞれ魅力的な奴らなのは確かなんだけどさ。
気が弱いとは思わないけど、あまり自己主張しない耀くんにはむしろ才華の方が合うかもしれない。
もちろん、英深でやって行けそうにないという意味じゃなくて。
お母さんは、それもわかった上で気を揉んでたんじゃないだろうか。
そして俺もそういうズレというか、一人自分を追い込んでいるかのような耀くんが確かに気になってたんだ。
あの夕陽の『彼』の話を聞いた時。
到底信じ難いまさしく荒唐無稽な内容が、理屈じゃなくストンと腑に落ちたのはそういう前提が俺の中にあったからなんだと今はわかる。
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