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「……だから。母のせいじゃなくて、僕の問題なんです。僕の出来が良くないから。『どうしても行きたい』なんて言い張っておいて中等部は落ちたし、高等部だってこのままじゃ……」
半年以上家庭教師を続けて、それなりに親しくなって耀くんの信頼も得られたんじゃないかと自惚れていた。
でも彼が俺に、こんな風に本音を、……弱味を見せてくれたのは初めてだったんだ。
今思えば、耀くんが俺に向けていたのはあくまでも表面的な余所行きの顔で、本心を明かす気なんてさらさらなかったんだろう。これまでは。
「耀くん。受験に絶対はないし、今の段階で合格間違いなしだから安心しろなんて言えない。それは確かだ。でも君は志望校別模試の成績も申し分ないし、合格判定だって何の心配も要らないレベルだろう? あの数字、なかなか出ないよ」
「でも、……」
俺に限らず、おそらく学校や塾で先生に説明されていても、肝心の耀くんが自分に自信が持てないんだろう。
マイナス思考のスパイラルとでもいうのか、どんどん袋小路にはまり込んで行くばっかりなのかもしれない。
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