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「不安があったら俺にでも塾の先生にでも、……そうだな、もし信頼できる先生がいるなら塾の方がいいかもな。受験についてはそれこそプロなんだし。とにかく、一人で思い詰めても何もいいことなんかない。吐き出すだけでもいいから誰かに相談して」  柄にもなく『先生の顔』で(なだ)めるように言い聞かせる俺に、耀くんは一瞬俺の目を見てすぐ(うつむ)いてしまう。  次に顔を上げたとき、彼は思い切ったように口を開いた。 「先生、もう少しお時間構いませんか? ここじゃなくて、もっと誰もいないところで聞いて欲しいことがあるんです」  断る選択肢は俺にはない。もう事態は動き出した。  アクセルを踏んだのは、俺だ。 「わかった。そうだな、店だとどうしても人はいるし。……線路沿いに歩いたところの公園は? 遊具が無いから小さい子連れも居なさそうだし。木が多くて野球やサッカーもできないから、小中学生もいないだろ。どう?」  そもそも「木が多くてボール遊びができない」のではなく、「禁止されてるボール遊びが後を絶たないために、景観は無視して仕方なく木を植えた」という話らしいが。  まあそれはどうでもいいか。 「はい。それでいいです」  生真面目に返して来た耀くんに、俺は頷きで答えた。
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