【2】

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「大丈夫、わかってる。信じてるから。耀くんを知ってる人なら、それは疑いもしないよ。だから落ち着いて。──もしできたら、もう少し詳しく教えてくれる?」 「わか、りません。何も、わからないんです。僕、……僕、おかしい、んじゃ」  無理もないが、いつになく動揺を見せる耀くんに俺はどう対処すればいいんだろう。 「それは、……おかしいなんて、そんな。部屋の中なら知らない人が入るってことはないだろうけど、何か、勘違いとか。あー、折り畳みなら小さいだろうし、文房具用に以前買ったとか、……それはないんだね。えっと」  俺には、何の役にも立たず慰めにさえならない、呆れるほど陳腐な言葉しか掛けられない。  自分の底の浅さが恨めしくなる。 「それに、ナ、ナイフだけじゃ、なくて。その時に、ベッドの下に何かあると思って引っ張り出したら紙袋で、その中に、服、が」  ──服。あの、耀くんが選びそうにもない黒っぽい、朔、の?  そういえばそうだ。あのとき朔が来てた服は、到底耀くんの私服とは思えないんだから。
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