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汐に聞いた事実。
耀くんは知らない、でも俺は知っている、いくつかのこと。教えるべきなんだろうか。本人には知る権利がある、んだろうか。
だけどどこから説明したらいいんだ? こんな現実離れした話、聞いただけで信じられるか?
君の中に別の人間が居るんだ、って? いきなり?
──俺には、言えない。
「……耀くん、とりあえず今日は帰ろう。送ってくよ。遅くなったらお母さんも心配するし。何かあったら、なくても少しでも不安なことがあったら、いつでも連絡してきていいから」
肩に手を掛けて俺が言うのに、耀くんは黙って首肯した。
俺の役立たずっぷりにがっかりしたのか、それとも一応聞いてもらっただけでも安心できたのか。
彼の無表情からは何も読み取れなかった。
これは俺の、責任放棄、なんだろうか。
──途中で投げ出すくらいなら、最初から目を背けていた方がまだマシだった、のか?
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