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「耀くん! 今どこ?」
「……公園、あの、先生と……、あ、……来て、くれる……?」
今にも消え入りそうな弱々しい声が一瞬帯びる、微かな希望を見出したかのような響き。
「すぐ行く! 自転車で向かうから、──そう、十五分。待てるよね?」
考えるより先に言葉が飛び出していた。
行ってどうする。
心の中でそう思うのも事実だ。
だけど、行かなくてどうする! 耀くんに頼られたら応えたいんだよ。
もしかしたら、また後悔するだけの結果に終わるのかも知れない。
それでも、やっぱり俺は行ってしまうんだ。……行きたいんだ。これは俺の自己満足にすぎないんだろうか。だけど。
最初から無視しとけば、ってのは一歩踏み出す前にしか通用しない。だって俺はもう、走り出したんだから。それも自分から。
「せん、せ──」
涙声。もう言葉になっていない。
俺は彼に再度待つように念押しして、通話を終わらせる。
そしてスマホをポケットに突っ込んで、財布と鍵だけ掴んで部屋を飛び出した。
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