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公園の前で急ブレーキで止まった俺は、パーキングする手間さえ惜しくてその場に自転車を放り出す。
ごめんなさい。許して、今は!
ポールを縫うようにして公園に足を踏み入れると、あちこちに点在する大きな木の向こうに広がるのは、燃える空。
左右を見回した俺の目に、探すでもなく飛び込んで来た耀くんの姿。ベンチの傍の木の幹に、もたれるように立っている。
駆け寄る俺を見ようともせずにだらんと手を下げて、……その右手に握られているものが朱く鈍く光った。
ナイフの、刃が。
「耀く、!」
俺の声が引き金になったのかはわからない。
彼はこちらに目線さえ寄越さなかったから。でもタイミングとしてはそう思ってしまうくらいだったんだ。
耀くんはナイフを持った手をゆっくり持ち上げて、──自分の顔の方に持って行く。
「止めろ! オレを殺すのか⁉ お前も一緒に死ぬんだぞ!」
耀くんが叫ぶ。……耀くんの身体が、口が、……別の自我、が。
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