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「……消した」
耀くんが呟く。耀くんの口が。
「違う、僕は、僕……」
「違わない。お前は朔を、……『もうひとりのお前』を消したんだ」
「ちがうちがうちがう! 僕はそんなの知らない! 僕は僕だ。五十嵐 耀だよ」
彼の中で、いったい何が起こっているのか。もう俺には見えない、理解できない。
……その方がいい、のかもしれないけど。
ただ一つ、確実なのは。この、俺の目に映ってる『耀くん』の身体の中に、耀くんと汐がいるってことだけだ。
──ついさっきまでは、耀くんと朔だった。そこに、……奥に汐もいたんだろうか。
夕陽の時間は汐のもの、だった筈だ。あとの二人を繋ぐ存在の。
彼ら『三人』のバランスが、──メカニズム、が崩れた……?
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