【2】

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 俺の前では、途切れることなく『会話』が繰り広げられてた。  頭の、あるいは心の中のじゃない。現実に、物理的に同じ口から吐き出される、同じ、……でも異質な声。二人分の。 「そうだ。五十嵐 耀。この身体の名前」 「オレ、……僕、だ。耀は、ぼく……」  耀くんが混乱している様子が手に取るように伝わって来る。 「耀。朔は今どうしている?」 「知らな、! 朔、朔、は。……どこ?」  の口元が笑みの形に動く。  口角を上げた、まったく笑っていない、笑顔のかたち。 「ここ!」  右の掌を胸の真ん中に勢いよく当てて。  がそれまでの歌うような、冷たいけどどこか長閑(のどか)な調子から一変して、鋭い声を出した。  ……その時になって、俺は自分が耀くんと汐の声を、言葉を、ごく自然に完全に聞き分けていたことに気づいた。  ホントに今更だ。 「……こ、こ?」  胸に置かれた手を見下ろす、迷子の子どものような頼りない耀くんの声。 「そう、ここ。朔は消えた。『お前』が飲み込んだ」 「僕は、しらな、い」  戸惑っている耀くん。
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