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    ◇  ◇  ◇ 「牟礼さん、次どうします?」  研究室のコンパの後、後輩が二次会の出欠を訊いて来る。 「俺は帰る。悪いな」  一次会はともかく、金もないし二次会になんて参加するのがレアとまで言われる俺なので、向こうも想定内の答えだった筈だ。  それがわかってて一応は誘わなきゃならない幹事も、考えてみりゃ気の毒だよな。先輩だから無視もできないだろうし。 「あ、わかりました。それじゃお疲れ様でした」 「おー。また明日な。あんまり遅くならないようにしろよ」  片手を上げて適当に振りながら、俺は台詞の途中でもう半分彼らに背中を向けていた。  繁華街とまでは呼べない、居酒屋や飲食店の並ぶ界隈を俺は真っ直ぐ駅へ向かう。その道中だった。 「へ、っ!」  思わず妙な声を上げてしまった。無理もない、と思う。何故なら。 「耀、くん⁉」  咄嗟に身を翻して、俺はつい今しがた擦れ違った細身の少年の腕を後ろから掴む。  頭より先に、身体が動いてた。人違いだったら、なんてその時は頭を(かす)めもしなかった。  だって耀くんとは仮にももう半年以上、週に二回は二人きりで至近距離で過ごして来たんだからな。
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