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 俺は、大学の最終講義が終わってすぐここに来た。  ……窓の外はオレンジ色に満たされている。 「耀くん。え、っと。今、具合、は……、あ、悪くないんだよね」  自分でも何が言いたいのかと思うくらいの、意味不明な台詞。  それでも耀くんは、俺が倒れた場に居合わせて救急車を呼んだことも聞かされているらしく、安心して気が緩んだとでも解釈してくれたらしい。  あのときの記憶がないのなら。──そして、目の前のこの少年が耀くん、ならば。 「本当に、目が覚めた時からちょっと(だる)いくらいでたいしたことなかったんです。さっき言ったみたいに、身体は結構重かったっていうか思い通りにならない感じだったんですけど」  穏やかな声で淀みなく話す様子は、間違いなく耀くんだ。  夕陽の彼の、素の様子とはまるで違う。  が擬態しているのでなければ。  ……俺は、いったい何を考えている、んだろう。 「先生、退院したらまた家庭教師お願いします。学校、の授業はともかく塾も休んで遅れちゃったし。もう受験まであまり日がないですから」  ベッドの上に上体を起こした姿勢で、耀くんは背筋を伸ばして俺に切り出した。
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