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「耀ちゃ、耀。そんなに頑張り過ぎなくていいんじゃないの? 英深学院に(こだわ)らなくても、学校や塾の先生もあなたならどこの高校でも心配いらないって言ってくださってるんだから」  横から、お母さんが気遣わしげに口を挟む。黙っていられないって感じだな。 「お母さん、先生の前で止めてよ。僕は大丈夫だから。どうしても英深に行きたいんだ。そして塔都大学に行く。お父さんや牟礼先生の後輩になるから」  きっぱりと宣言した彼に、今までとは違う何かを読み取ったのか。お母さんは少し複雑そうに、それでも確かに微笑んだ。 「うん、わかった。じゃあ、退院して体力的に行けそうだと思ったら連絡して。俺はいつでもいいから。耀くんさえよければ、受験まで時間増やすのもOKだからね。ただし! 無理は禁物。それだけは約束しよう」 「はい、よろしくお願いします。先生」  言い聞かせるような俺の言葉に、耀くんは神妙な顔で頭を下げた。 「すみません、先生。本当に、牟礼先生に来ていただいてよかった……」  お母さんにまでそんな風に言われて、俺は正直困る。  実際、俺は何もしてない。できなかったことばかり数えられるくらいなのに。  改めて別れの挨拶を交わし、俺は病室を後にしたんだ。
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