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俺が病院を出たときには、もうかなり日は傾いていた。
すでに空は、オレンジではなくなっている。残り火のような暗い光も、間もなく消えるだろう。
薄暮の中を歩きながら、俺は不意に初めて会った時の汐の言葉を思い出した。
「耀か朔か、どちらかが相手を消したら、おれも消える」
……?
「お前は朔を消したんだ」
汐は公園で確かにそう言った。あのとき、耀くんの中には朔はもういなくて、……でも汐はいた?
何故?
「朔は『ここ』」
胸、……心? 『飲み込んだ』っていうのは、吸収したってことでいいのか?
耀くんと朔がひとつになって、つまり朔も耀くんの『中』にいるから、汐も消えなかった?
──じゃあ、今、は?
これからは……?
俺はいったい、どうしたらいいんだろう。
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