【3】

7/8
前へ
/49ページ
次へ
「牟礼先生、改めてありがとうございました」 「いや、だからさ」  言い掛けた俺を、耀くんが止める。 「僕はもちろん頑張りました。それはもう謙遜(けんそん)はしません。でも、先生のおかげも絶対にありますから」  控え目な、……だけど自信に溢れた言葉、雰囲気。 「先生、次は塔都のキャンパスでお会いしたいです。確か院に進まれるんでしょう?」 「うん。この四月からね」 「だったら僕が大学に入学するときには、先生もまだ大学、あ、院にいらっしゃいますよね?」  合格して入学するのが当然、という前提で話を進めている耀くん。この短い時間に、彼に何があったのかと思っても不思議じゃない。  ──何、が。 「……途中で挫折するか、クビにならなきゃね」 「そんなこと、先生なら心配いらないでしょう」  可笑しそうに声を立てて笑う、耀くん。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加