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「牟礼先生、改めてありがとうございました」
「いや、だからさ」
言い掛けた俺を、耀くんが止める。
「僕はもちろん頑張りました。それはもう謙遜はしません。でも、先生のおかげも絶対にありますから」
控え目な、……だけど自信に溢れた言葉、雰囲気。
「先生、次は塔都のキャンパスでお会いしたいです。確か院に進まれるんでしょう?」
「うん。この四月からね」
「だったら僕が大学に入学するときには、先生もまだ大学、あ、院にいらっしゃいますよね?」
合格して入学するのが当然、という前提で話を進めている耀くん。この短い時間に、彼に何があったのかと思っても不思議じゃない。
──何、が。
「……途中で挫折するか、クビにならなきゃね」
「そんなこと、先生なら心配いらないでしょう」
可笑しそうに声を立てて笑う、耀くん。
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