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【Three years later】
「牟礼先生!」
突然背後から掛けられた声に俺は正直戸惑った。
おいおい、『先生』って。
大学に残れるかどうかも怪しい、特別将来を嘱望されてるわけでもないただの院生の俺に、何の冗談か嫌味かと。
当然ながら機嫌がいいとは言えない状態で振り向いた俺は、声の主の正体に気づいた瞬間素っ頓狂な声を上げてしまった。
「……よ、耀、くん?」
「はい! 五十嵐 耀です。ご無沙汰しています」
はきはきと答える耀くん。
当たり前だけど少し大人っぽくはなったものの、やっぱり本質は変わってない気がする。
「あ、あー。ウチの学生になったの?」
「ええ。……そう言ってたでしょ?」
驚かそうと思って、と悪戯っぽく笑う。
それで連絡してこなかったのか。合格したら教えてくれるだろうし、便りがないのはつまり……。
不合格だったらこちらから訊くのはマズい、と結構ヤキモキしてたんだけど、俺。
ウチは浪人も珍しくないしな。
耀くんならまず大丈夫とは思っても、昔の中学受験のこともあるし。
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