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そう、俺はもちろん覚えてた。
耀くんの方も高校時代は会わないつもりで「次は塔都で」だったんだろうし、俺からもこの三年敢えて連絡は取ってなかった。
だけど彼の大学受験の時期くらいはな。
「今も小島の小父さ、いえ、教授の研究室にいらっしゃるんですよね?」
「うん。ずっとお世話になってるよ」
言葉の上だけじゃなくて、ホンっとお世話になってる。
「もしかしたら僕も、直接の後輩になるかもしれませんよ。……ただ、その可能性は高くない気はします。正直、小島教授や牟礼先生のなさっている研究は僕の興味とは少し違っているので」
あれから三年以上経って、二十二から二十五になった俺はたいして変わらない。
なのに耀くんは本当に成長したんだなと思わされた。
もう彼は、ただ先を行く者を闇雲に追い掛けていただけの十五の少年じゃない。
「……とりあえず『先生』だけはやめてもらえるかな。もう俺は君の家庭教師じゃない。これからはただの『先輩』だろ?」
「すみません、つい。そうですね、せ、牟礼さんだって困りますよね」
俺のリクエストに、彼は初めて気づいたように目を見開いて恥ずかしそうに謝る。
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