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「……? 誰? アンタ」
素っ気ない反応。
間違えた? いや、まさか、だって声も違わ、な……?
「耀くんじゃ、ないの?」
「……違うよ。オレはそんな名前じゃない。つか、手ぇ離せよ、失礼だろ」
その時になってようやく、俺は本当に人違いをしてしまったんだ、と納得した。
眼が、違う。
耀くんは、こんな鋭い、射殺すという表現が当て嵌まるような眼をしていない。
やけに尖った声も口調も。そして、裸眼に黒っぽいシャツとスリムパンツ、手首に何やら金属の輪っかを付けたファッションも。
……何もかもが、違った。
「あ、ああ。ゴメン。えっと、すみませんでした」
混乱したままとりあえず謝る。俺が一方的に悪いんだから当然だけど。
少年は俺の顔をちらっと一瞥する。
そして、力は入ってないが未だ彼の腕に掛かったままだった俺の手を振り切るようにして、無言で歩き去った。
駅とは反対の、今まで俺が居た、……飲み屋街の方へ。
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