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◇ ◇ ◇
連日の居残りにさすがにうんざりしていた俺は、思い切って最後の講義が終わると研究室に顔を出しこのまま帰ると告げた。
その場にいた教授や学生たちと連絡事項だけやり取りして、ごく普通に送り出され大学を後にする。
疲れたまま惰性でやったって効率が悪くなるだけだ。
そんな風に自分に言い訳しながらも、半分以上真剣にそう考えてる。リフレッシュ大事。うん。
それにしても、バイト以外でこんな時間に帰るのは久しぶりだ。大学を出て、駅へ向かう途中にある大きな橋に差し掛かったときだった。
俺は誰かが欄干に手を掛けて川を、あるいはその向こうの夕陽を見ながら立っているのに気づいたんだ。
見覚えのある、細身のそのシルエットは。
「よ、耀くん⁉」
俺の声に身体ごとくるりと向き直ったその顔は、確かに俺のよく知る五十嵐 耀だ。
でも、なのに。この違和感は、……何だ?
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