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数日後、津波が引いて、自分の住んでいた家に向かった。愛子の自宅は、海に近かったので、辺り一面津波がのみ込み全て無くなっていた。
愛子の自宅があった場所にたどり着く。
やはりだだっ広い平地となっていて、愛子は放心状態で両膝から崩れ落ちた。
物静かな愛子とは違い、明るく元気な母。豪快に笑い、豪快に酒を飲み、強くて優しい父。そんな両親だから、毎日が賑やかで、楽しかった。たまには静かにして欲しい時もあったけど、今となってはどうでもいい。ただ、二人が側にいてくれる、それだけでどんなに幸せだったか。ここにはそんな賑やかで、温かい場所だった。それが今はーーーー。
昨日、母が遺体で発見された。父は行方が分からず。ただ、生きている可能性はゼロだということは分かっている。遺体だけでもと思ったが見つからなかった。
今いるこの場所で、当たり前の日常を送っていただけだった。
それが1日で全てを失った。
人が泣く時、自分が可哀想で泣く場合と、ただ悲しくてなく場合がある。
愛子はその後者で、ただ、悲しくて涙が止まらなかった。
「お父さん、お母さん」
無意識に声を出して両親を呼ぼうとするが、声がでない。何度も何度も試すがダメだった。
愛子は「声」も失うこととなる。
パラパラと静かに雪が舞い落ちてきた。
この日、愛子は14歳の誕生日を迎えた。
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