第一章

2/9
前へ
/81ページ
次へ
4年後ーーーー。 私は18歳になった。あれからずっと、声を失ったまま生活をしている。 あの日から私は父方の親戚に預けられた。 「愛子ちゃん、大変だったね。今日からここが君の家になるんだよ。遠慮しなくていいからね。」 親戚達は、全てを失い、声さえも失った私をとても気遣ってくれた。 だが、その気遣いはいつからか、腫れ物を触るかのようなものになっていった。 それは決して気持ちのいいものでは無いが、申し訳ないと思いながら生活をしている。 その家には同い年の娘、由香もいた。両親の前ではとてもいい子で、私にも「愛ちゃん」と呼び、仲がいい振りをしていた。 だが、両親が見ていない所では、、、。 「愛子、あんたいっつも辛気臭い顔して!母さん達に同情されようとしてるの分かってるんだから。マジうざい。」 最初、由香はそんな嫌味を言ってくる程度だった。 だが、私が特に堪えてないので、歳を追うごとにエスカレートしていった。 そして、現在は由香の男友達に殴られるようになった。 「この子、声でないからいくらでも、殴りな」 顔はバレるからそれ以外でと。 自分を1番に見て、可愛がってくれていた両親が、私ばかりに気がむくのが面白くないんだろう。 こんな事されても仕方ない事だと思った。 彼女の日常を奪ったわけだから。 全てを亡くした私は、ぽっかりと心に穴が開いてるので、どんな暴言を言われても何にも感じなかった。殴られるのは痛いけど、いっその事殺してくれとまで思うようになっていったのだ。 そう、殺してくれとーーーー。 その願いがいよいよ叶う時が来た。 いつものように由香と男達に、体育倉庫に連れてこられた。 男の1人が私のお腹に蹴りを入れ、私はその場に倒れる。そこから、顔以外の身体に蹴りを入れる。 何発も。 私は痛みに顔が歪むが、目は虚ろ。 その目を見た由香は、頭に血が上る。 男達に、どいてと言って、愛子に馬乗りになる。 「あんた、ほんと、要らない!死ね!」 そう言いながら、愛子の首を絞めた。 私は意識が遠のいていく。これで私は死ねる。 お母さん達の所に逝けるーーーー。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加