第三章

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愛子は、積もる話もあるからと、広江の家に泊まることになった。 一輝は、玄関先で愛子と向き合った。 そして、愛子を抱きしめた。 「俺も愛子が生きてくれて本当によかったと思う。それにずっと傍にいたいと思うよ。」 愛子の身体を離すと、それじゃと言って帰っていった。 愛子は頬が赤くなった。それと同時に、胸がズキンとした。 夜が更け、愛子と広江は布団を並べて横になった。 「愛子、今好きな人はいるの?」 「分からない。でも、一緒にいると安心して落ち着いたり、胸がズキンとしたの。これがどう言う感情なのかわからない。」 「ふふっ、それが好きという感情よ。一輝君が好きなんでしょ?」 「え!?なんで?」 「それは、愛子が一輝君を見る目が、好きだと言ってる様だったから。それに、さっき抱き合ってたじゃない。」 愛子は、恥ずかしくなり、布団に潜り込んだ。 「うふふ。頑張りなさい。」 朝日が昇る少し前ーーー 「広江、広江、」 広江は、目を開けると、広江の横に勝男が座っていた。 「勝男さん、私、うんと生きたわよ。」 勝男は、笑って頷く。 「昨日約束した通り、迎えに来たよ。沢山話を聞かせてくれますか?」 「ええ、勿論。なんなら、沢山の恋人の話もーー」 勝男は困った顔をした。 「それは聞きたくないですね。ちょっと所か、かなり嫉妬しています。」 「うふふ。心から愛していたのは貴方だけでした。」 広江は、起き上がった。 だが、身体が起き上がった訳ではない。広江は幽体となっていた。 そして、勝男と出会った頃の若い姿になった。 「死ぬと若い頃に戻るって本当なのねぇ〜、不思議だわ」 広江は信じられないと言うように、手を交互に見たり、顔を触ったりする。 「それに、死んだ人が迎えに来るっていうのも、ドラマみたいだわ。本当にあるのねぇ〜」 勝男は苦笑する。 「広江、死んでそんな事を関心しながら言う人は、君位だよ。」 「あら?そうなの?」 二人は吹き出して笑った。 そして、勝男は愛子のそばに寄る。 「愛子、どうか幸せに生きるんだよ。私達皆から愛された子。」 勝男は愛子の頭を撫でて、微笑んだ。 そして、広江と手を繋いで黄泉の道を歩いていったのだった。 愛子は、うっすらとした意識の中で、誰かに頭を撫でられた感触を感じた。 愛子が目を覚まし、横で眠っている広江を起こす。 昨日言っていた事が、心配でたまらなかった。 だが、その予感は的中してしまう。 「広江さん?広江さん?」 広江は、うっすら微笑むような、幸せそうな顔をして冷たくなっていた。 「広江さん!やっと、やっと会えたのに、、、」 愛子は広江を抱きしめながら、泣いたのだった。
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